« 2009 F1 オーストラリアGP 予選 | トップページ | 2009エイト祭&エイトリアンカップ »

2009/04/26

FJ1600に関する最高裁判例

勉強していたら出てきました。

FJ1600、と言われてどんなものか想像できる人ならば、法律・判例ネタとしては読み物としておもしろいと思います。長文ですのでお時間あるときにどうぞ。

FJ1600が分からない方は、こちら

平成9年11月11日 最高裁第三小法廷判決

【概要】
宇治税務署が、FJ1600を物品税法(消費税法制定時に廃止)の課税対象を指定する「課税物品表 第二種7号」にいう「小型普通乗用四輪自動車」に該当するとして課税したことについて、FJ1600の製造販売業者がその課税処分の取消を求めた事件。

争点は、FJ1600が物品税課税対象の「小型普通乗用四輪自動車」にあたるか。

結論は「あたる」。つまりFJ1600は小型普通乗用四輪自動車として物品税を課税されました。

最高裁でも意見は割れ、5人中3人が「あたる」、2人が「あたらない」という微妙な判断でした。
「あたる」とした裁判官
 裁判長裁判官 山口 繁(裁判官出身)
 裁判官 園部 逸夫(学者出身)
 裁判官 千種 秀夫(裁判官出身)

「あたらない」とした(反対意見を述べた)裁判官
 裁判官 尾崎 行信(弁護士出身)
 裁判官 元原 利文(弁護士出身)

ちなみに、第1審(平成5年1月29日京都地判)は「あたらない」、第2審(平成6年3月30日大阪高判)は「あたる」という判断でした。


【「あたる」の判断理由】
「乗用」ということを重視。

以下、「」内は判決理由からの引用。「本件各自動車」は「FJ1600」と読み替えています。

「FJ1600も人の移動という乗用目的のために使用されるものであることに変わりはなく、自動車競走は、この乗用技術を競うものにすぎず、また、FJ1600の構造、装置が道路を走行することができないものとなっているのも、右のような自動車競走の目的に適合させるべく設計、製造されたことの結果にすぎないのであって、FJ1600は、乗用とは質的に異なる目的のために使用するための特殊の構造、装置を有するものではない。したがって、FJ1600は、その性状、機能、使用目的等を総合すれば、乗用以外の特殊の用途に供するものではないというべきであり、普通乗用自動車に該当するものと解すべきである。」


【「あたらない」(反対意見)】
「普通」ではないことを重視

「FJ1600の主たる目的は、高速走行に適合した構造や機能の開発、試験に資し、自動車その他の機械の改良、進歩、機械工業の合理化などを図るものとしての自動車競走にあり、そこには、普通乗用自動車本来の、人を運搬して社会的、経済的効用を達成することは含まれていない。それゆえ、FJ1600は、自動車競走の目的に適合させるべく、通常の安全装置が省略され、発電機やエアクリーナーの装備もなく(さわじぃ注:エアクリないの?)、乗車に際してはいったんハンドルを外して上部から乗り込み運転席に着席してからハンドルを取り付ける仕組みとなっているなど、専ら自動車競走場という限定された場所における高速走行を目的とした特殊な構造、装置を備えたものであって、そもそも道路を走行することが全く予定されておらず、そのために必要な構造、装置の重要な一部を欠くものである。このように、FJ1600は、人を地点間で移動させて社会的、経済的効用を達成する目的を有しておらず、これを主たる目的とする「普通」の乗用自動車とは著しく異なる特異の形状、機能を有しており、そのため、道路運送車両法上特殊用途自動車としても登録できないものである。したがって、これらの性状、機能、使用目的等を総合すれば、FJ1600は、自動車競走場における自動車競走という特殊の用途に供するものとして、「普通」乗用自動車には該当しないと解すべきである。」

「さらに、税務当局は、行政解釈により遊園地専用の乗用自動車及びゴーカートを「普通乗用」自動車に該当しないとして取り扱っているのであって、FJ1600をこれにあたるとするのは、あまりにも恣意的にすぎるというべきである。」

【他の判断との比較】
普通乗用自動車に「あたらない」もの(例)
・貨物自動車
・乗合自動車
・寝台自動車
・消防自動車
・特殊自動車として登録するもの
 救急車・移動レントゲン車・移動図書館車
 放送宣伝用自動車・電波測定車 等
・キャンピングカー
・遊園地専用のゴーカート、乗り物


【感想】

私自身は、引用した反対意見の後段部分にまさに同意なのですが、遊園地専用のゴーカートと、サーキット専用のレーシングカー、なぜ判断が分かれるか、合理的な説明は難しいような気がします。FJ1600が乗用であり移動の用に供するのであれば、ゴーカートだって・・・

あと、最高裁の裁判官が5人集まって、FJ1600とはいかなるものか、という議論をし、それぞれの主張を判決理由としてまじめな文書にした、という状況を想像するのも・・・おもしろいですよね。

ちなみにこの判例、私は絶対に忘れないと思いますけど、物品税法がはるか昔に廃止されている今、同法の事実認定についての最高裁判断を知っていても何の役にも立ちませんので、全く意味がありません・・・orz
そもそも租税法を選択しようと思ってないし。。。

残念ながら当該判例は最高裁判所のウェブサイトでは掲載されていないようですので、詳しく知りたい方は、租税判例百選(第四版)14事件、判例タイムズ(No.959 P150)などをご参照ください。

|

« 2009 F1 オーストラリアGP 予選 | トップページ | 2009エイト祭&エイトリアンカップ »

コメント

ははは・・
笑うしかありません。

裁判員制度が実施されていれば、結果は違ったかもしれませんね。

投稿: たるみ | 2009/04/26 18:45

たるみさん>

もしかしてご存知でしたか、この判例。

読んでいると本当に笑えます。
発電機(オルタネーターですよね?)、エアクリ(ホントにないのか?)、ステアリングの脱着よりも、ほかに特殊性を説明する特徴がなかったのか、とか。。。

裁判員制度、確かに死刑になるような犯罪ではなく、こういった一般人の社会通念を反映させるような事件を対象にした方が選任された人の負担も軽減できるし、いいような気がしますね。

投稿: さわじぃ | 2009/04/26 19:55

判決理由とか、もう少し易しくできないもんでしょうかw

投稿: てきどん | 2009/04/26 20:57

これって他カテゴリの(ナンバー無し)レースカーは
どんな判断だったんですかね?

F3やF3000などのフォーミュラだったりとか
プロトタイプカーやドンガラのハコ車や
レーシングカートなどなど。

・・・あ。
でもドンガラ車は購入時点では普通に登録車ですね ><

投稿: kamekichi | 2009/04/26 23:13

てきどんさん>

判決って結局は書面が全て、という部分があり(現に今この平成9年の判決を見るには書面で確認するしかない)、後日読んだ人が誤解(裁判所の意図とは異なる解釈をしてしまう)しないよう、ひとつのことを述べるにも、正確な説明して言葉の意味を限定して、となっているのでこうなっているのでしょう。

まあ、ただ、裁判員制度の導入で変わっていくとは思います。

投稿: さわじぃ | 2009/04/27 05:40

kamekichiさん>

裁判は、訴えの範囲内でしか判断しないので、この裁判ではFJ1600の判断しかしていないです。ただ、もし以後の裁判があれば、特に下級審(地裁・高裁)では、この最高裁の判断に影響を少なからず受けますから、それなりの判断がなされたであろうと思います。

以下は私の勝手な理解ですが、上級カテゴリのレーシングカーは、完成車状態で取引されることはなく、パーツで仕入れてチームで組み立てて走らせているような気がします。とすれば、パーツ単体では当然「乗用車」としての機能なんてないですから、物品税の問題にはならなかったのではないかと。

今回FJ1600が問題となったのは、同じ完成車状態の車体を量産(というレベルかどうかは別にして)して、そのまま乗り出せる、という状態で取引していたから、ではないかと思います。この観点では、レーシングカートも同じだと思いますので、遊園地のゴーカートは対象外で、レーシングカートは対象?というところが当該判決の判断の最大の批判対象ポイントだと思います。

いずれにしても今は消費税ですので、パーツ単体でも課税されているでしょう。。。

投稿: さわじぃ | 2009/04/27 05:48

藤村さんの件ですね。
いいガレージでした。

投稿: ぃよっしー | 2009/07/08 01:02

ぃよっしーさん>

コメントありがとうございます。
おっしゃるとおり、有名なガレージだったみたいですね。私は全然知りませんが・・・

投稿: さわじぃ | 2009/07/09 01:11

検索していて引っかかりました。いやぁ、びっくり、興味を持って頂いた方がおられるんですね。
この裁判で最初から懸念されていた前例として、各自動車メーカーが作る、工場から一歩も出ないまま終わったテスト車両にも物品税をかけていた、というのが有ったそうで、「乗用目的ではなく試験目的」「公道に出ない」というレースカー同様の条件があったのですが、これにも乗用車としての物品税をかけていたそうです。
もし、レースカーが乗用に当たらないとして物品税を免除/返却すると、大量に課税したメーカーのテスト車両も同様になる訳で、それは避けなければならず、理由の如何を問わず敗訴が最初から決定していた、という、あくまでうわさ話。うわさですよ。

完成車としなければよい、というのはその通りで、税務署からの指導として、買い取った客が自分で最終組み立てをすることが条件で、その際に場所を提供してはいけない、工具を提供してはいけない、なおかつ、簡単な脱着式部品ではなく、工具を使って締結する部分を組み立てなければならない、とされました。(この部分は私が直接確認したこと)

信憑性の判断はお任せしますが。

投稿: びっくり | 2009/09/05 16:41

びっくりさん>

コメントありがとうございます。

判例百選にも掲載されている事件ですから、税法を勉強されている方は、「そんな事件あったなぁ」程度の認識はあるのでしょうね。たまたま私がモータースポーツに関心があったから、「判例百選にFJが出てきた!」と注目しただけです。その他には(一般の法律学習者が気にも留めないけど私が注目したのは)、近江先生の民法の教科書(民法講義V 第2版P232)に、トヨタ2000GTが請負契約目的物の所有権帰属の例の説明で出てきたことくらいでしょうか。

工場(メーカー)から出ないテスト車両にも課税、ですか。価額はどうやって決めていたのでしょうね(私は取引をしなければ物品税はかからないのかと思ってました・・・素人考えです)。だとすると、完成させた人が納税義務者、ということでしょうかね。

それはさておき、メーカーのテスト車両は、販売目的の乗用車のものである限り、当該判決の反対意見の事実認定部分とは大きく異なり(FJに比べて相当部分について公道を運行するための装備がついている)、FJは非課税だけどテスト車両は課税、という判断は全く問題なくできるような気がしますけどね。

投稿: さわじぃ | 2009/09/06 08:52

jf1600でしょ?!!!

投稿: | 2010/01/12 03:18

お名前が未入力なのでどなたか知りませんが、「jf1600」が正しいのですか?

それでは「jf1600」とはどのようなものでしょうか。Google検索しても当該判例に合致するような物は(少なくとも上位には)ヒットしないようです(研磨機と競馬?)。

「FJ1600」とすれば全て理解できたのですが、FJ1600とは違うものでしょうか? それともFJ1600とは正式なカテゴリ名称ではないのでしょうか?

投稿: さわじぃ | 2010/01/12 06:23

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/33550/44801712

この記事へのトラックバック一覧です: FJ1600に関する最高裁判例:

« 2009 F1 オーストラリアGP 予選 | トップページ | 2009エイト祭&エイトリアンカップ »